要注意の「インプラント周囲炎」は、なぜ起こる?
歯周病や噛み合わせの不良で失われた歯に代わり、手術で人工の歯を入れるインプラントは、まさに“第二の永久歯”ともいうべき素晴らしい治療法です。ただし、以前の「インプラントのデメリット」ブログでもご紹介したように、そこにもいくつか注意すべき点はあって、治療後に発症する「インプラント周囲炎」はなかでも最も要注意のリスクといえます。
この病気は、歯周病と同じくインプラントのまわりにたまったプラーク(細菌のかたまり)が繁殖し、ついにはインプラントを支える顎の骨を溶かしてしまうもので、治療後、数年から10年単位で発症――放っておくと、せっかく入れた新しい歯を再び失う恐れもあり、事実、インプラントがダメになるケースの大半がインプラント周囲炎によるものといって過言ではありません。
こうした事態が起こる原因には大きく分けて3つあって、インプラント治療の際には、患者様ご自身はもちろん、治療を行う歯科医がこれを十分に知っておくことが重要です。
原因の1つめは、おもに患者様の側によるもので、インプラント治療後のケアが正しくできていないため、歯周病菌が繁殖してインプラント周囲炎が起こるというケースです。
自前の歯と同じように、新しく入れた人工の歯と歯茎の間にもいわゆる“歯周ポケット”はあり、日々の正しいブラッシングによるプラークコントロールができていないと、細菌は確実に増えていきます。
そして、やがては手術で埋め込んだインプラント体の周囲の骨まで侵し、半永久的にもつはずの人工の歯がグラグラしてきてしまうのです。
これを防ぐには、一に二にも正しいメンテナンスを行うことで、治療後も定期的に検診とブラッシングの指導を受けるのがその決め手になります。
2つめの原因は、せっかく手術で新しい歯を入れたにもかかわらず、事前の検査や治療のための「設計」がいい加減なため、治療後にかえって噛み合わせの調和が崩れてしまうというケース。このブログでもたびたび書いてきたように、噛み合わせのハーモニーは歯の健康のすべてを左右するもので、インプラント治療の際も大変重要なポイントになります。
たとえば、ミクロン単位で顎の骨のどこにインプラント体を埋め込むか、新しく入れる歯の形状とサイズはどうするべきか、周囲の歯茎はどういうふうに盛り上げるべきか……などの事前の検査と設計すべてが、治療後に正しい噛み合わせをつくる目的で、完璧に、精密に検討されたうえで手術を行わなければなりません。
これができていないと、治療後に噛み合わせが悪くなり、つねに不自然で強い負荷がかかることで、真っ先に新しく入れた歯がぐらつき始めます。そして、不安定になった人工の歯の周囲には自然にプラークがたまりやすくなり、やがてはインプラント周囲炎へと進むことになるのです。
いい加減なインプラント治療が、術後の歯周病を引き起こす!
術後の歯周病でインプラントがダメになる原因、その3つめも歯科医によるいい加減な治療によるものです。
インプラント治療が必要な患者様の場合、もとの歯を支えていた周囲の骨のも歯周病菌のせいで溶かされ、量が少なくなっていたり、歯が失われたせいで歯茎もやせ、しなやかなハリを失っていることが少なくありません。
こうしたケースでは、むやみにインプラント体を埋め込んでも、それを支える骨や健康な歯茎がないため、じきに根っこの部分がグラグラしてきます。
そのため、噛み合わせが崩れたり、歯周病菌が繁殖しやすくなって、最後にはインプラント周囲炎を発症、数年(早ければ1年ほど)で新しく入れた歯がポロリ、という結果になるのです。
これを防ぐには、手術に先だって、失われた骨を増やす「骨移植」の処置をしたり、正しい指導によるブラッシングで歯茎にしなやかなハリを取り戻すことが重要なのですが、残念ながらそれを知らない(知っていてもやらない)歯科医が圧倒的に多いのも事実です。
とりわけ「1本○万円でインプラント!」などとうたう安直な歯科医院の場合、コスト面からもそんな手間をかけていては採算がとれませんので、周囲の骨が少なかろうと、歯茎がやせていようと、とにかく形だけインプラント手術をするという例がまかり通ってしまいます。
結果、10年、20年はもつはずのインプラントがダメになり、再手術をしなければならなくなりますが、そうなるとじつに大変です。
もともと骨や歯茎がまともでないところへ無理にインプラントを施し、そこにまた歯周病が起こり、悲惨な状態になっているところへ、あらためてインプラントを入れるのですから、お金も時間も2倍3倍とかかり、当然、治すことのできる歯科医も限られてきます。これでは、患者様としては泣いても泣ききれません。
インプラントというのは、その仕組みはじつにシンプルですが、これを正しく行うためには噛み合わせの調和を中心とした深い知見と、非常に高度な治療技術が不可欠です。
だからこそ、せっかく入れたインプラントを治療後の歯周病で失わないため、患者様は術後のケアを正しく行うのはもちろん、治療を受ける際には「本当にこの歯科医院で大丈夫か?」という点をしっかりと見極める必要があります。
治療後のリスクを最小限に抑えるうえでも、インプラント治療の際は、まず信頼に足る歯科医を見つけること。 私どものクリニックは、そうした信頼に100%おこたえする自信と誇りがございます。