4人に1人が死んでいる!ガンの本当の原因は歯周病だった
ここにかかげたのは、厚生労働省が発表した最新の死因別死亡数の割合(2017年)をしめしたグラフです。
(出典)厚生労働省「平成29年人口動態調査」
ご覧のとおり、1位は「悪性新生物(腫瘍)」すなわちガンで、じつに日本人の4人に1人がなんらかのガンで亡くなっているということがわかります。
以前のブログで、歯周病が心疾患や脳血管疾患による突然死の原因になるというお話をいたしましたが、このグラフで見てみると、両者を合わせても23%あまり……それだけ、ガンによる死者の多さは際立っているといえましょう。
そして、最近では突然死と同じく、ガンの発症にも歯周病が大きな原因のひとつであるということが、医学上の“新常識”になりつつあります。
このことは疫学調査といわれる、長期にわたる継続的な研究でもはっきりとわかってきており、歯科医学の先進国であるアメリカのジョンズホプキンス大学は、重い歯周病のある場合にガンの発症リスクが24%も上昇することを報告。
また、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンの調査でも、歯周病歴のある人では、そうでない人にくらべてガンをわずらう可能性が全体的に14%高いことがわかりました。
では、なぜ歯周病があると、ガンを発症するリスクが高くなるのでしょう?
その詳しいメカニズムは研究の途上ですが、実際にも、ある種のガンの細胞から歯周病の原因菌が多く見つかるなど、そこに大きな関連があるのは間違いありません。
以前は、ガンといえばウィルスの関連が疑われ、細菌による感染とは無関係とされていましたが、胃ガンの発症とピロリ菌の深い関係がわかったのをはじめ、今や細菌の感染はガンの大きなリスクのひとつであることが明らかになりました。
なかでも歯周病菌は口を通じて多くの内臓へと運ばれやすく、そのせいでガンの原因になりやすいと考えられています。
全身に運ばれた歯周病菌がガン細胞を発生させる
たとえば、歯周病菌は歯と歯茎周辺の毛細血管を通じて体内の血管へ侵入し、体のあちこちに運ばれて慢性的な炎症を引き起こしますが、最近ではガンの発症もこれがひとつの原因とする説が有力です。
すなわち、歯周病菌のせいで長期にわたり炎症が続いてしまうと、その部分の細胞のDNAが傷つけられ、正常な細胞が異常を起こしてガン細胞に変化する――そうしたことが起こっていると考えられるのです。
(出典)厚生労働省「平成29年人口動態調査」
同じようなことはまた、歯周病菌が食事や呼吸によって体内に運ばれるせいでも起こると考えられており、実際にも肺ガンや大腸ガンと歯周病菌による慢性の炎症が深く関係している事実が明らかになっています。
肺ガンと大腸ガンといえば、最新の統計でもガンによる部位別の死亡者数も急増中で、その点でも歯周病の予防が大切な命を守るためには不可欠といえるでしょう。
歯周病菌との直接的な関係については、ほかにも膵臓ガンの発症や食道ガンといった、発症後の5年生存率が低い(完治しにくい)ガンでもこれを裏付ける調査結果が報告されるなど、歯科ドックでの歯周病の早期発見と治療を強くおすすめするところです。
噛み合わせのストレスが、NK細胞を無力化してしまう?
一方、歯とガンの関係でいえば、噛み合わせの不具合もまた見逃すことができません。
噛み合わせが悪い、いわゆる「不正咬合」というのは、四六時中サルグツワをかまされているのと同じで、食事などの日々の習慣のうちに歯に負担がかかり、寝ている間にもギリギリと歯ぎしりをして、無意識のまま体に大きなストレスを与えています。
ご存じのとおり、ストレスは万病のきっかけになりますが、なかでも私たちの免疫をつかさどり、ガン細胞を初期の段階で押さえ込むNK(ナチュラルキラー)細胞の働きを悪くすることが明らかです。
そうであれば、このストレスを知らず知らずにかけてしまう噛み合わせのトラブルも、一刻も早く改善しなければならないでしょう。
もうひとつ、歯の健康との関係では、ガンを発症した場合の治療成果を大きく左右するという点も、わかってきています。
たとえば、ガンの手術ではほとんどの場合、全身麻酔を行いますが、その際に口からのどを通して人工呼吸器のチューブを気管に挿入するのが普通です。
このとき、口の中が歯周病菌におかされていると、チューブととともに菌が気管や肺へ入り込み、手術が成功しても、その後に肺炎を起こして重体に陥るなどの事態を引き起こしかねません。
特に、口の中や喉頭(のど)、食道などのガンの手術では、術後の細菌感染による合併症をふせぐため、最近ではまず口内のケアを行ってから手術をすることも当たり前になってきています。
日本人の死因ワースト1であり、これからもその割合が確実に増加すると予測されている恐ろしいガンと、身近な歯の健康――その間には、こうした深刻な関係があります。
そのことを、患者の皆様にはぜひとも知っておいていただきたいのです。