歯が失われる原因といえば、歯周病――
多くの皆さんが、そう思っていらっしゃいます。しかしながら、歯周病はあくまで歯を失う原因のひとつであり、もうひとつの大きな原因を忘れるわけにはいきません。
それは、噛み合わせの問題、専門的には「不正咬合」と呼ばれるリスク=病気です。
私たちの歯は28本ワンセット、すべてオリジナルの噛み合わせをもっており、角度にして1度単位、わずか0.1ミリという精密さで、おさまるべき位置にピタリとおさまっています。
大臼歯や小臼歯でいえば、咬み合う上の歯と下の歯、それぞれの表面はパズルのようにその凹凸が合うように生まれついているおかげで、体重の5倍というものすごい力で「噛む」ことができるのです。
それだけ精密にできているからこそ、上下がうまく咬み合わない「不正咬合」の状態では、そのものすごい力が不自然に、過酷な状態で歯にかかってくることになります。
原因としては、虫歯で痛い歯をかばうために顎を不規則に動かして噛んだり、歯周病で歯が抜けたり、あるいは生まれつきの八重歯など、さまざまにありますが、いずれも本来なら歯並び全体で支えるべき力が、特定の歯に集中するのですから、大変です。
しかも多くの場合、上下の歯の角と角、奥歯でいえば凹凸がいびつにぶつかるため、ものを噛むたびにその一点へ体重の5倍(50kgの人の場合は250kg!)の力が常に“カチカチカチカチ”と、ハンマーで叩いているように集中するのですから、長い時間となるとたまったものではありません。
ついにはグラグラとしてきて、スポっと抜けてしまうことになります。
というと、なかには「歯が1本くらい抜けたって……」とおっしゃる方がおられますが、とんでもない間違いです。
噛み合わせが悪くなるとどうなるか
歯というのはうまく(?)できており、1本が欠けると、そのすき間を埋めようとして歯の角度が自然に変わり、わずか数日で歯並びがガラリと変わってしまうことも珍しくありません。
そうなると、噛み合わせは前よりもいっそう悪くなって、またしても別な歯に“カチカチカチカチ”が繰り返され、1本また1本と大切な歯が失われていく――こうしたケースでは歯周病がある場合も多いため、二重のダメージで口の中はついに“崩壊”し、あとは栄養不足からくる“衰弱”と“死”へ一直線です。
しかも、噛み合わせというのは、じつは生まれついて完璧という方は大変に少なく(およそ1000人に1人ともいわれます)、どこかしら「不正咬合」という名の“病気”をかかえているケースがほとんど。
四歯科ドック」で噛み合わせの状態を把握し、そのうえで原因となる歯周病の予防や虫歯の完全な治療、もともとの歯並びが悪い場合はインビザラインなどによる矯正(正しい歯並びはプラークコントロールをしやすくし、歯周病予防にも有効です)で、不正咬合が起こるのを予防すること。
すでに歯が抜けている場合は、インプラントをはじめとする治療によって、正しくリカバリーをすることが残りの歯を守ることになります。
噛み合わせについては、たんなる歯並びの問題だけではなく、顎関節から前歯にかけてのすべてのポイントに関する精密な理論があり、これを学んだうえで症例に応じた適切な予防と治療を総合的に計画するのが大前提です。
が、残念なことに、日本の歯科医でそのことを知っているのは、歯科先進国のアメリカの基準に照らした場合、全体の0.5%にも満たないかもしれません。
これに対し、私どもでは世界標準となる噛み合わせの理論「ドーソン・セオリー」に基づき、文字どおりの“オーダーメイド診療”で、患者さんの歯をお守りしています。