Floss or Die(デンタルフロスか、死か)
これは、1990年代に歯科先進国であるアメリカの歯周病学会がかかげた歯周病予防のスローガンです。「歯をきちんと磨くか、おろそかにして死ぬか」そんなことを言われると、「おおげさな」とお思いになるかもしれませんが、これはけっしてジョークではありません。
歯をきちんと磨くことがなぜ大切か? それは、歯周病予防の“基本のキ”だからです。
歯周病がなぜ怖いのか? それは、次の2つの理由で死につながる恐ろしい病気だからです。
①歯が次々に失われることにより、老化と死への歩みが加速度的に早くなる。
②歯周病菌の繁殖が、歯だけでなくさまざまな臓器へ致命的な影響を与える。
歯周病とは、歯と歯ぐきの間の「歯周ポケット」に“プラーク”と呼ばれる原因菌の吹きだまりができ、それによる炎症や菌自体が出す酸のせいで、歯と根っこの部分(歯槽骨)がまるごと溶けていく病気。
病状は少しずつ、しかし確実に進行し、痛みも感じないうちにある日すっぽりと歯が抜けてしまいます。
(※プラークとは、歯垢のことで歯の表面に付着している細菌のかたまりです。)
歯というのは、上下28本が精密機械のように噛み合うことで機能するものであり、たとえ1本失われただけでも大変な打撃です。
最初の1本が抜けてしまうと、あとは歯周病自体と咬み合わせのバランスがくるうことによるダブルパンチで、文字どおりドミノ倒しのように歯がどんどん減っていきます。
こうして歯が失われれば、食物をきちんと噛むというその第一の目的が果たせなくなるのは当然のこと。
食物は歯によって噛み切られ、すりつぶされることで、はじめて消化吸収をすることができますが、その働きが失われれば、生物にとって最も重要な栄養の摂取ができず、待つのは衰弱と「死」あるのみです。
ほかにも、歯周病で歯を失うことは、咀嚼による脳への血流が減るせいで認知症の原因となったり、転びやすくなって寝たきりになるリスクが高まるなど、まさに「人生100年時代」における最大の脅威。
最近では、上の②のように歯周病がダイレクトに死につながる危険性もわかりつつあり、私が「人間ドック」や「脳ドック」ならぬ「歯科ドック」の必要性を強く訴える理由も、この点にこそあります。
現在、日本による歯周病の罹患率は、20代でもおよそ75%、30代で80%、それ以上ではじつに86%という、まさに隠れた“国民病”です(厚生省「歯科疾患実態調査報告」による)。
プラーク除去で歯を歯周病のリスクから守る
これを防ぐには、一にも二にも歯とその周囲に付着したプラークを取り除くことであり、矯正によりケアのしやすい歯並びするなどの治療が有効となりますが、最も効果が高く身近にできるのが、日々の歯磨きであることはいうまでもありません。
しかしながら“基本のキ”である、この歯磨きに関しては、きちんとできている方がきわめて少ないというのが正直なところでしょう。
というのも、立方体をした歯の5つの面を28本すべて正しく磨くには、歯科医師や衛生士などエキスパートによる指導が不可欠であり、発症の目安となるプラークの量(16%以下)に抑えるためにも、信頼できる歯科医で指導を受け、衛生士による定期的なプラークのケアを習慣にすることが必須です。
私どもでは、これら総合的な予防のノウハウとケアにより、患者さんの歯を歯周病のリスクからお守りすることを、自信をもってお約束します。