健康寿命とは?平均寿命との違い
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)によって提唱された新しい健康指標であり、寝たきりや認知症などの介護状態に陥らず、健康上の問題によって日常生活が制限されない期間を指します。
豊かな人生を送るためには、この健康寿命を寿命とほぼ同じにできるのが理想的です。
どうすれば健康寿命を延ばせるのか。健康的な生活といえば、バランスの良い食事・適度な運動などが真っ先に挙げられますが、それと同じぐらいお口のケアも大切です。
健康寿命と平均寿命との差は
男性で約9年、女性で約12年
厚生労働省の「平均寿命と健康寿命の推移」によると、2016年の時点で日本人男性の平均寿命は80.98歳、健康寿命は72.12歳。日常生活が制限され、平均寿命と健康寿命の差にあたる「不健康期間」はおよそ9年に及びます。
日本人女性の平均寿命は87.14歳、健康寿命は74.79歳。不健康期間はおよそ12年です。
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平均寿命 |
健康寿命 |
不健康寿命 |
男性 |
80.98歳 |
72.12歳 |
8.86年 |
女性 |
87.14歳 |
74.79歳 |
12.35年 |
なお、健康寿命や不健康期間には様々な定義がありますが、このデータでは「健康上の問題により日常生活動作、外出、仕事、家事、学業、運動等に制限がある期間」を健康寿命との差である不健康期間としており、必ずしも寝たきり状態などを意味しているわけではありません。
介護が必要になる原因はお口の
病気と深い関わりがあります
近年、お口の健康状態と全身疾患には、密接な関係があることが分かってきました。
平成22年国民生活基礎調査によると、介護が必要となった主な原因は以下の通りです。
- 脳卒中
(21.5%)
- 認知症
(15.3%)
- 高齢による衰弱
(13.7%)
- 関節疾患
(10.9%)
- 骨折・転倒
(10.2%)
- 心臓病
(3.9%)
原因1位の脳卒中、2位の認知症の発症には、歯周病も関係していることが多くの研究で明らかになりつつあります。
介護原因第1位の脳卒中
後遺症が残ることが多く、介護が必要となる原因第1位である脳卒中。脳内の血管が何らかの理由で詰まったり、破けたりして、細胞に栄養が届かなくなる恐ろしい病気で、脳血管障害とも呼ばれます。
歯周病患者は脳卒中のリスクが
2倍以上!?
脳卒中は、誰しも突然発症する恐れがありますが、危険因子としては高血圧や不整脈などの持病、喫煙などの生活習慣が挙げられます。近年の研究では、歯周病もこの危険因子の1つであることが指摘されています。
歯周病の炎症によって作り出される毒性物質は、血液中に入り込むと、動脈硬化(血管が硬く、もろくなる状態)を引き起こしやすくするのです。実際に、動脈硬化の病巣から歯周病菌が検出された例もあり、歯周病の人はそうでない人の2倍以上、脳卒中のリスクがあるとも言われています。
アルツハイマー型認知症
認知症には複数の種類があり、とくに高齢になると心配されるのがアルツハイマー型認知症です。認知症の約6割がこのアルツハイマー型であり、アミロイドβとよばれるたんぱく質が脳に蓄積されることで発症に至ります。
認知症と歯周病に関する研究が
進んでいます
2020年、九州大学や北京理工大(中国)の研究チームは、正常なマウスと歯周病菌を直接投与したマウスを比較した実験を行いました。
結果として
- 歯周病菌投与マウスはアミロイドβを脳内に運ぶ「受容体」と呼ばれるたんぱく質が2倍増加
- 歯周病菌投与マウスは脳細胞のアミロイドβの蓄積量が約10倍に増加
こうしたデータが検出され、歯周病菌がアルツハイマー型認知症の発症や進行に大きく関わっていることが示唆されました。記憶実験でも、歯周病菌を投与したマウスには、記憶力低下が確認されています。
高齢者の転倒リスクは残存歯数によって大きく違う
高齢になると、転倒した拍子に骨折し、その際のケガが原因で寝たきりになってしまうことが珍しくありません。65歳以上の高齢者に実施した調査では、自分の歯が19本以下で義歯を使用していない人は、20本以上自分の歯がある人に比べて、転倒のリスクは2.5倍になることがわかりました。
一方、自分の歯が19本以下でも義歯を使用している人のリスクは、20本以上自分の歯がある人の1.36倍程度です。
しっかりと噛むことで運動機能の衰えを防ぎ、寝たきりになるリスクを軽減できると言えるでしょう。
健康寿命を延ばすために
大切なこと
当院は開業当初から、将来を見据えた歯科医療、健康寿命を延ばせるような治療に努めてきました。健康寿命を延ばすためには、どのようなお口のケアが重要か、お伝えいたします。
歯科ドックでの総合的な検査
歯科ドックとは、簡単にいえば人間ドックの歯科版です。歯や歯茎、顎関節の位置や噛み合わせについて総合的な検査を行います。歯科ドックを受診することで、噛み合わせの問題を含めたお口の特徴がよくわかり、健康を守っていくためにより効果的な予防方法が見えてきます。
定期的なプロフェッショナルケアによる歯周病予防
歯周病は、脳卒中や認知症なとの関係性が明らかにされつつあります。歯を失う原因の第一位も歯周病であり、自分の歯が少ない人ほど認知症の発症リスクは上昇するという研究もあります。
歯周病予防の基本は、プラークコントロールです。セルフケアだけでなく、定期的に歯科医院でのプロフェッショナルケア、メンテナンスを受けましょう。
歯の喪失を防ぐための治療
成人の歯は親知らずを除き28本あり、だいたい20本以上歯が残っていれば大抵の食品が食べられ、体力の維持もしやすいはずです。
歯科の世界では一度治療した歯の再治療、その結果の歯の喪失が少なくありませんが、当院では極力再治療を避けて、長持ちするような治療のご提供に努めています。抜歯を避けるための精密根管治療など、歯を守るために全力を注ぎ、もしどうしても抜歯が必要になってしまった場合にも、残った他の歯に極力影響を与えないインプラント治療をご提供できます。
かかりつけ歯医者の有無が
健康寿命を左右します
お口の健康は、全身の健康と密接に関わっています。なんでも相談できて、真に信頼できる歯医者に出会えるかどうかは、健康寿命の延伸を大きく左右するといっても過言ではありません。
当院では、患者様の人生における良きパートナーであり続けられるよう研鑽を重ね、生涯の健康を守るための治療のご提供に努めています。
人生に悩んだら、いい歯科医を探しなさい
- 著 者岩本宗春
- 仕 様四六判・並製・200ページ
- 出版社講談社エディトリアル刊
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